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医薬ジャーナル 2018年2月号(Vol.54 No.2)

p32(234)~p42(244)


▲メディカルトレンド・姉妹誌から


アレルギー・免疫(Vol.25 No.2) 特集・花粉症の基礎と臨床 アップデート
化学療法の領域(Vol.34 No.2) 特集・感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
CLINICAL CALCIUM(Vol.28 No.2) 特集・生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~
血液フロンティア(Vol.28 No.2) 特集・慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患

アレルギー・免疫(Vol.25 No.2)
《特集・花粉症の基礎と臨床 アップデート》

〔企画・日本医科大学多摩永山病院部長・病院教授 後藤 穣〕




▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 序 ~花粉症研究・臨床の近未来~
 アレルゲン免疫療法には今起こっている鼻眼症状を抑制するだけでなく,アレルギー疾患の自然史(natural course)に影響を及ぼす可能性が期待されている。舌下免疫療法が実用化されたことは,わが国のアレルゲン免疫療法に転機をもたらした。実用化後には約2倍の医療機関で皮下または舌下による免疫療法が実施可能になっている。
(後藤 穣)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 I.花粉症における鼻粘膜過敏性亢進の発症機構
 多くの国民が,くしゃみ,鼻水等の辛い症状に悩まされる花粉症では,特にその重症化・慢性化に伴い鼻粘膜過敏性の亢進がみられる。筆者らは,花粉症を含めたアレルギー性鼻炎のマウスモデルを樹立する過程で,抗原の点鼻チャレンジを反復することによって,感作マウスが鼻粘膜過敏性亢進を呈することを見いだし,その評価系を確立した。
 種々の遺伝子改変動物や,独自のT細胞移入マウスを用いた解析によって,本モデルにおける鼻粘膜過敏性亢進の発症機構として,鼻炎症状の誘発に必須とされてきたIgE(immunoglobulin E)/マスト細胞系や,さまざまなアレルギー疾患において炎症局所への浸潤がみられる好酸球等は殆ど関与しない一方,種々のT細胞サブセットに分化したCD4陽性T細胞が中心的な役割を果たすことを明らかにした。T細胞が産生する未知の鼻粘膜過敏性亢進誘発物質を標的とした,花粉症に対する新たな治療法開発の可能性が示唆された。
(神沼 修・西村友枝・廣井隆親)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 II.舌下免疫療法の効果予測に向けた機械学習に基づいたデータ解析
 スギ花粉症の舌下免疫療法の治療効果の有無を,治療前に計測した血中サイトカイン量を用いて予測する機械学習に基づいたデータ解析について紹介する。血中サイトカイン量のプロファイルの階層的クラスタリングの結果にも示される多因子的な背景が想定されるため,単独項目の血中サイトカイン量に設定した閾値による判定のみでは十分な治療効果の予測精度は得られない。複数項目の血中サイトカイン量に設定した閾値による判定結果の重み付き多数決によって治療効果の予測精度を向上させるアンサンブル学習と呼ばれる手法について紹介する。
(中谷明弘)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 III.アレルゲン解析,免疫療法
 スギ花粉症は我が国特有の季節性アレルギー疾患であり,その罹患率の高さと国民レベルでのquality of life(QOL)低下への影響から大きな社会問題となっている。スギ花粉症の引き金を引く原因アレルゲンとしては2種類の主要抗原であるCry j 1およびCry j 2を中心に研究が進展しているが,筆者らの網羅的アレルゲノーム解析からCry j 1・Cry j 2以外にも重要な感作アレルゲンが複数存在することが明らかとなっており,これらアレルゲンコンポーネントを用いた次世代の診断・治療技術開発への基盤となりうる知見も蓄積されつつある。本稿では,スギ花粉アレルゲン解析を巡る研究について,主要な抗原分子種構成と免疫生化学的性状,および当該アレルゲンコンポーネントを用いた診断・治療技術の開発に関する最近の動向を紹介する。
(河本正次)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 IV.スギ・ヒノキ花粉症 主要抗原についての新知見
 スギ花粉アレルゲン特異的免疫療法はヒノキ花粉飛散期の治療効果が低いことが知られている。先行研究により,ヒノキ花粉特異的な未知アレルゲンの存在が示唆されていた。筆者らはヒノキ花粉中の蛋白質を精査した結果,新規ヒノキ花粉主要アレルゲンCha o 3の同定に成功した。ヒノキ花粉ImmunoCAP陽性のスギ・ヒノキ花粉症患者は高率にCha o 3に感作されていることに加え,ヒノキ特異性が高いアレルゲンであることが示唆された。
 スギ・ヒノキ花粉症を標的としたアレルゲン免疫療法の治療効果最大化のために,ヒノキアレルゲン特異的免疫療法の開発が望まれる。
(長田年弘)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 V.新しい免疫療法について
~Solid-in-oil(S/O)技術を利用した花粉症経皮ワクチン~

 季節性のアレルギー性鼻炎の中でも,スギ花粉症は全人口の4人に1人が罹患していると言われ,その治療に対する関心は高い。現在行われているアレルゲン免疫療法では,皮下注射による皮下免疫療法と,舌下粘膜経路の舌下免疫療法がある。近年,より簡便で高効率な免疫療法として,皮膚中に豊富に存在する免疫細胞を利用する経皮免疫が注目されている。本稿では,物理的手法を使用せず,非侵襲的に経皮薬剤デリバリーを行う技術として期待されるsolid-in-oil (S/O)技術と,これを用いたスギ花粉症モデルマウスの経皮免疫療法について解説する。
(後藤雅宏・北岡桃子)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 VI.スギ花粉数の今後の予測
 東京では過去10年のスギ・ヒノキの花粉数が2,000個を下回ったのは2年だけで,平均の花粉数が4,200個を超えている。原因はスギやヒノキの樹齢が30年以上になり,花粉生産量がピークを迎えているためである。
 日本国内に植林されているスギ林はおよそ450万ha,ヒノキ林は250万haにも及んでおり,その95%以上が花粉を大量に生産する樹齢になっている。花粉が多くなるために夏の日照時間が影響するが,よほどの冷夏にならない限り,花粉の多い状態が続く見込みである。
(村山貢司)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 VII.スギ舌下免疫療法の臨床(内科)
~特に喘息合併症例について,喘息への影響~

 花粉症を含むアレルギー性鼻炎合併の喘息患者では,鼻炎の悪化に伴い,約1/3~ 1/2で喘息症状悪化が見られ,ピークフロー値が低下する症例も観察される。また点鼻ステロイドなどによる鼻炎治療によって,喘息症状が改善することが知られる。花粉症に対する舌下免疫療法は,鼻炎や結膜症状だけでなく,気道症状も改善させる。さらに花粉症に対するアレルゲン免疫療法は喘息発症も抑制する可能性が示唆されている。スギ舌下免疫療法(シダトレン®)の喘息に対する効果のデータは少ないが,鼻炎による喘息症状の悪化を抑える可能性が期待され,今後のデータ集積が待たれる。
(中込一之)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 VIII.舌下免疫療法は根治・寛解治療になり得るか
 舌下免疫療法は根治も期待できる非常に効果的な治療である。本邦で発売のスギおよびダニの舌下免疫の臨床試験ではプラセボと比較して有意に高い奏効率を示し,寛解を示唆する例も認めている。我々の3年間のスギ花粉での結果で33%に寛解と9%に無投薬で鼻眼症状が全くない例があった。海外報告も含めて考えると,複数年以上の治療で寛解率も増え,寛解の維持には最低3年以上の治療が必要とされる。寛解が長く続けば根治ともいえるが,舌下免疫療法の治療歴史が浅いので,今後の検討が必要である。
(湯田厚司・小川由起子)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 IX.免疫療法におけるバイオマーカー治療前予測および治療評価
 アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法はプラセボ効果が高く,治療の効果を正確に判定することは容易ではない。スギ花粉症では年毎に花粉飛散量が異なるために症状スコアの単純な比較をすることができない。舌下免疫療法の今後の臨床的課題を解決するためにも,治療効果を客観的に評価するためのバイオマーカーを確立する必要がある。また,治療前,あるいは治療を開始してから早い段階で効果を予測することができる因子を確立することは患者負担の軽減につながる。
(米倉修二・櫻井大樹)

▲花粉症の基礎と臨床 アップデート
 X.花粉症研究への問題提起
 62年間の花粉症の自身の研究から,将来の花粉症の研究にいくつかの臨床的問題提起を記した。① 空中飛散スギ花粉数とスギ花粉症は今後も増加するだろうか,② スギ花粉情報は臨床上必要か,③ 舌下免疫療法により花粉症の根治は可能か,④ 鼻アレルギーのケミカルメディエーター,サイトカインの臨床的認知の3条件,⑤ 早期介入療法(初期療法)の将来である。いずれも花粉症の臨床的視点からの研究の進歩を祈念している。
(奥田 稔)



化学療法の領域(Vol.34 No.2)
《特集・感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向》

〔企画・国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院感染症部長 岩田 敏〕



▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 序 -感染性心内膜炎の今日的問題点-
 感染性心内膜炎は,抗菌化学療法が進歩した今日においても難治性であり,治療には抗菌薬・抗真菌薬の長期投与を必要とする疾患である。また,症例によっては弁置換術などの外科的な治療が必要となる場合もある。感染性心内膜炎を発症するリスク因子を有する方の発熱に対しては,常に感染性心内膜炎の存在を念頭におき,適切な検査診断を進めることが重要である。
 また,ハイリスク者においては発症を予防することが重要であるが,発症予防目的の抗菌薬予防投与に関しては,近年その考え方に関して変化がみられている。
(岩田 敏)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 1.感染性心内膜炎の病態生理
 感染性心内膜炎は,心内膜や弁などに細菌集簇からなる(ゆう)(しゅ)が付着し,その構造を破壊する全身性敗血症性疾患である。心不全や塞栓症等を併発し,重症菌血症とあいまって,しばしば致死的となる。発症の母地としては,弁膜症や先天性心疾患,心臓手術後などの影響で生じる非細菌性血栓性心内膜炎が重要と考えられているが,最近は基礎心疾患のない例にも発症することが知られている。また,歯科処置をはじめとする先行侵襲的処置が菌血症を発症し疣腫の形成につながると考えられてきたが,特にきっかけなく発症する例も多い。歯磨き等の日常動作でも一過性の菌血症が起こるため,普段から口腔内を清潔にしておくオーラルケアの重要性が指摘されている。
(中谷 敏)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 2.感染性心内膜炎の疫学
 感染性心内膜炎の罹患率は人口10万人・年当たり2~7例とされ,比較的まれであるが,一旦罹患すると重篤な転帰をたどり,患者の負担は大きい。背景心疾患,それ以外の背景因子によって感染性心内膜炎罹患率は異なり,罹患率の高い患者群に対する教育・予防が重要である。高齢者例,医療関連感染性心内膜炎が増えてきており対処が必要である。主たる原因菌はかつて多かった緑色レンサ球菌から黄色ブドウ球菌に変化してきているが,欧米と日本とでは少し違いがある。わが国固有の状況を反映した対策と検証を行うために,より大規模な感染性心内膜炎データベースの整備が望まれる。
(大原貴裕)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 3.感染性心内膜炎の病理
 感染性心内膜炎では左心系弁膜に疣贅をともなう細菌感染巣を認める。重症感染症であり,敗血症の病態が必発である。しばしばリウマチ性あるいは動脈硬化性の弁膜症を基盤に発生する。人工弁輪に二次感染する場合もある。口腔内常在菌や黄色ブドウ球菌が原因菌となることが多いが,表皮ブドウ球菌,腸球菌,グラム陰性菌や真菌による場合も経験される。病理医が感染性心内膜炎に遭遇するのは病理解剖が多く,敗血症とそれに続発する播種性血管内凝固症候群にともなうさまざまな全身性病変が観察される。全身性微小膿瘍が特徴的である。諸臓器に血栓塞栓症を続発する症例も認められる。
(堤 寬)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 4.感染性心内膜炎の診断-病歴・症状・身体所見・検査所見・画像診断-
 感染性心内膜炎は全身の敗血症性疾患であり,心内・心外合併症を引き起こす。そのため,早期診断・早期治療の開始が感染性心内膜炎患者の予後に大きくかかわる。症状は多彩で非特異的であり,診断が遅れる症例もしばしばみられる。このことを念頭におき,常に疑う姿勢が重要である。そして疑えば,修正Duke診断基準に当てはめて診断を進める。感染性心内膜炎の画像診断としては心エコー図検査が中心となる。経胸壁心エコー図検査は全例に行うが,経食道心エコー図検査も積極的に行う。さらに最近では,特に人工弁患者などでFDG-PET/CTなどのモダリティも有用であることが報告され,複数のモダリティを用いて早期診断を心がけるべきである。
(泉 知里)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 5.感染性心内膜炎の診断-細菌学的診断-
 感染性心内膜炎の診断の基本は血液培養である。血液培養は抗菌薬を開始する前に採取することが望ましい。実臨床では,外来診療で経口抗菌薬が投与され,その後,病院に紹介されることも多いが,2週間以内の抗菌薬投与により感染性心内膜炎の患者の血液培養が偽陰性になる場合がある。また,培養が通常陰性となる微生物については各微生物ごとに検査方法が異なるため,検査室と連携することが重要である。最近は,血液培養が陽性後(24時間程度以内に陽性),わずか2~3時間程度で微生物の同定結果がわかる時代になっている。今後は質量分析器(MALDI-TOF)などによる迅速な同定検査が臨床現場でますます活用されるようになる。従来よりも時間的に有利に,患者へ最適な治療を提供できることが期待されている。
(矢野晴美)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 6.感染性心内膜炎の内科的治療
 感染性心内膜炎の治療においては,原因菌に対して活性を有する薬剤を十分量,推奨される期間投与する。適応があれば外科的治療が優先的に行われる。おもな原因菌は,viridans group streptococci (VGS)とブドウ球菌属,腸球菌である。国内でもブドウ球菌は増加傾向にあり,依然として高い死亡率と関連している。感染性心内膜炎の診療において,心臓内科医や心臓外科医のみならず,感染症医や薬剤師の果たす役割は小さくなく,多職種の連携によってよりよい治療成績につながる。
(光武耕太郎)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 7.感染性心内膜炎の外科的治療
 感染性心内膜炎(Infective endocarditis:IE)に対する外科的治療の適応は,心不全,抵抗性感染,そして塞栓リスク,これら3つの病態から判断するが,IEでは脳合併症を有することが多いため,個々の症例で手術のタイミングを検討する必要がある。日本循環器病学会から刊行されている既存のガイドラインでは,脳梗塞を合併した症例に対しては2週間以上の待機手術がよいとされてきた。しかし新ガイドラインでは,脳梗塞の状態に応じて手術時期を勘案することが明記される予定であり,本稿でもそれに準じて記載を行った。IEに限らず外科的治療では手術のタイミングを逃さないことが大切である。病巣の拡大や脳塞栓は病態を重症化させ,患者の日常生活動作を大きく損なうことを肝に銘じ,治療に当たるべきである。
(三浦 崇・江石清行)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 8.歯科処置時における感染性心内膜炎予防投与
 歯科処置時に感染性心内膜炎(IE)発症リスクのある患者に抗菌薬の予防投与が勧められている。抗菌薬予防投与の効果については,ヒトにおける無作為比較試験(RCT)が行われていないため結論は出ていない。2007年,米国心臓協会(AHA)は予防投与の対象を限定,その後2008年,英国医療評価機構(NICE)はすべての予防投与を中止するガイダンスを発表した。その後,英国においてはIEの発症数が増加しているとの報告があり,各国で検証がなされている。わが国でも,予防投与による発症予防効果と経済性,抗菌薬による副作用などを勘案してガイドラインの改訂が進められている。本稿では予防投与の歴史的背景と現状について記す。
(坂本春生・唐木田一成・高橋美穂・重野健一郎・日高真吾)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 9.小児領域の感染性心内膜炎
 小児においても感染性心内膜炎は一定の頻度で認められ,罹病率,死亡率ともに高い疾患である。小児の感染性心内膜炎の基礎疾患は先天性心疾患が圧倒的に多い。先天性心疾患は手術介入で治療されることが多いが,特に複雑な先天性心疾患においては人工材料を用いる手術が多いため,修復術後においても感染性心内膜炎の高リスクであることが多い。実際にわが国の多施設共同研究では半数以上が手術後であった。
 すなわち生涯にわたっての予防が必要となる症例が少なくない。世界的には感染性心内膜炎の予防投薬の対象を減らす潮流であるが,日本小児循環器学会のガイドラインは,より積極的に予防を推奨している。本稿では,わが国での多施設共同研究とそれを基盤にした「日本小児循環器学会ガイドライン」を軸に概説する。
(村上智明)

▲感染性心内膜炎のマネジメント・最新の動向
 10.動物の感染性心内膜炎
 感染性心内膜炎(IE)の発生は多くの動物種で報告されているが,実際に診断および治療の対象となるのは犬と猫のIEである。弁を含め心内膜を侵す感染因子のほとんどは細菌(細菌性心内膜炎)であるが,まれに真菌やリケッチアが関与することもある。犬や猫のIEは大動脈弁および/あるいは僧帽弁を侵すのがもっとも一般的である。IE発生の必須要件は菌血症であり,血液中の細菌が心内膜表面に生着・増殖することで感染が成立する。細菌が弁で増殖すると,通常,弁膜を巻き込んだ(ゆう)(ぜい)を形成するが,弁膜を広範に破壊することもある。IEでは弁が傷害されるだけでなく,感染性あるいは無菌性の栓子が剥離・脱落して,心臓,その他の臓器や組織の血管に詰まることで二次的な病変を形成する。
 細菌の持続性感染にともなう免疫系の活性化は各種の免疫介在性疾患を惹起することもある。犬や猫にみられるIEの多くは急性ないしは亜急性の経過をたどり,一般に長期予後は期待できない。
(町田 登)



CLINICAL CALCIUM(Vol.28 No.2)
《特集・生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~》

〔企画・大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科・免疫細胞生物学 教授 石井 優〕




▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Preface
 巻頭言
 生体を見ることで得られる「動く,動かぬ証拠」~創薬の新時代の幕開け~

 骨の中を生きたままでイメージングして,その中で動き回る破骨細胞の動態を観察し,世界で初めての「動く,動かぬ証拠」を世に出してから,もう少しで10年の年月が経とうとしている。
 この間,骨の解析は,従来の形態計測・組織学を基盤とした静的な世界から,生き生きとした動的な世界へと変化し,骨の科学のフィールドにはパラダイムシフトがもたらされたと言えよう。さらには,光学系やレーザー,化学プローブ合成など,イメージングを支える基盤技術の日進月歩は著しく,「見えなかったもの」が次々と「見えるもの」となってきた。
 このように最先端の技術革新が先鋭化していく一方で,骨イメージング技術の成熟が進み,基本的な解析手法が一般化されて,着実に普及が進んでいる。特に,イメージング画像の定量化によって,様々な治療や薬剤の評価を行うことができるようになったことは大きい。得られたイメージング画像を定量化して,その数値データを統計処理して有意差を示してこそ初めて,科学的根拠をもった結論を提示できる。すなわち,イメージングが“アート”から“サイエンス”の手段となった。
(石井 優)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Review
 生体骨イメージングの発展と次世代の医療
 「見えないものを見ようとする技術開発」が有史以来,常に医学・生物学を牽引してきたことは論をまたない。特に近年は,蛍光イメージング技術の急速な進歩により,生体内の奥深くの現象を単一細胞レベルで,かつリアルタイムで高精細に解析することが可能となってきた。筆者らのグループを中心に,本技術を骨組織の解析に応用する動きが広がり,いまや骨組織内の様々な細胞種の生きた動態やそれらの相互作用によって担われる生体現象を手に取るように理解することができるようになってきた。さらに最近では,イメージング画像データを定量化する方法論も成熟してきており,本技術を種々の薬効評価に活用し,またイメージングによって明らかになった骨組織の細胞動態を標的とした新たな治療法開発も視野に入ってきた。本稿では,生体骨イメージングの発展の歴史を紐解くとともに,この技術を基に今後どのような次世代の創薬が展開されるのか,その未来予想図についても議論したい。
(石井 優)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Review
 生体骨イメージングの基礎
 骨組織内には,リモデリングに関わる破骨細胞や骨芽細胞,骨髄内で分化・成熟を遂げる単球・顆粒球・リンパ球,その他の間葉系細胞や造血幹細胞など,多種多様な細胞が存在し,お互いがネットワークを形成することによって,日々多彩な生命現象が営まれている。近年,二光子励起イメージング技術が発展し,個体を生かしたままで生体骨組織内の細胞の挙動をリアルタイムで観察することが可能となり,骨組織内の複雑な細胞動態ネットワークとその制御機構が明らかになってきている。
(菊田順一・石井 優)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Seminar
 生体骨イメージングの方法論の開発
 骨組織には,骨代謝に関わる破骨細胞や骨芽細胞,骨細胞の他,骨髄内で分化・成熟を遂げる血球系細胞,その他の間葉系細胞や神経細胞など,多種多様な細胞が存在する。近年,「蛍光イメージング技術」の進歩により,骨組織を生きたまま観察することが可能となり,細胞の「形態」だけでなく,時間軸をもった「動態」を解析することが可能となった。我々は,低侵襲で組織深部を観察することが可能な「二光子励起顕微鏡」を改良し,マウスを生かしたままで,骨組織内の細胞の生きた動きをリアルタイムで観察するイメージング方法を確立した。本稿では,二光子励起顕微鏡の原理,“骨のin vivo イメージング”の方法論,取得したイメージング画像に定量性を付加していくための編集・解析の仕方などイメージングの方法論全般について概説する。
(水野紘樹・石井 優)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Seminar
 生体骨イメージングのプローブ開発~破骨細胞活性をイメージングする蛍光プローブ~
 生体分子を直接可視化して示すためのツールとして蛍光を発する分子は広く用いられている。蛍光プローブは,合理的な設計に基づき“見たい”機能を付与できる利点がある。生体骨をイメージングする蛍光プローブの場合,投与時に特異的に骨組織に送達される必要がある。近年,破骨細胞活性を検出するために開発された蛍光プローブは,骨を溶かす酸に応答して光る性質,骨組織への送達能,およびレーザー耐性を有している。この蛍光プローブを用いることで,生体内で破骨細胞が骨を溶かしている様子を長時間イメージングすることが可能となった。
(蓑島維文・菊地和也)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Seminar
 生体骨イメージング画像の定量的解析法
 骨組織は固い石灰質に囲まれており,その内部を生きたまま観察することは困難であった。しかし近年の顕微鏡技術や蛍光プローブ技術の進展に伴い,骨の細胞社会を形成する様々な細胞の多様な活動を見ることが出来るようになっている。
 その一方で,データの量的な増大と取得される情報の質の多様化や複雑化は,人力による定量的な解析を困難にしており,顕微鏡画像の自動処理やデータ解析についての情報科学的な方法論の開発が期待されている。本稿では,生物学と情報科学の境界領域であるバイオイメージ・インフォマティクスという研究分野を紹介し,その後,生体骨イメージングデータの解析のための課題と基礎的な画像処理技術を概説する。
(瀬尾茂人)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Seminar
 生体骨イメージングのためのリポーターシステム
 二光子励起顕微鏡を用いた蛍光イメージング技術が発達し,生体内で様々な発生過程や病態における様々な細胞の動態をin vivo で観察することができるようになってきた。この観察のためには生体内の細胞を生きたままの状態で特異的に蛍光標識する必要がある。その方法は遺伝子操作,化学蛍光プローブや蛍光標識抗体などが用いられる。
 本稿では,細胞特異的に内因性に蛍光タンパク質を発現させる遺伝子改変マウス(レポーターマウス)の作出法について解説する。マウスの発生工学技術やバイオリソースの現状から,トランスジェニック法,ノックイン法そしてCre/loxPの組み換え法,CRISPR/ Cas9法によるゲノム編集がレポーターマウスの作出方法として挙げられる。これらの方法の特徴とその応用の可能性について解説する。
(阪口友香子・西川恵三)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Topics
 生体骨イメージングの実際~破骨細胞
 破骨細胞は,単球系血液細胞から分化・成熟する多核巨細胞であり,骨吸収という特殊な機能を持つ細胞である。
 我々は,二光子励起顕微鏡を駆使して,個体を生かしたまま生体骨・関節組織内部をリアルタイムで観察するライブイメージング系を確立した。本技術を用いて,骨・関節内での生きた破骨細胞による骨破壊過程を可視化することに成功し,破骨細胞による骨吸収制御メカニズムを解明するとともに,生体内において生物学的製剤が炎症によって誘導された破骨細胞に及ぼす効果を明らかにした。
 本稿では,これらの研究成果について概説する。
(菊田順一・石井 優)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Topics
 生体骨イメージングの実際~骨芽細胞
 間葉系細胞である骨芽細胞は,骨基質を合成し石灰化を行うことで骨形成を担っている。しかし骨芽細胞が実際にどのように骨形成を行うのかに関しては明らかとなっていない。特に,固定標本で観察することが多い骨組織は,細胞の「動き」の情報を得ることが困難であり,骨ホメオスタシスにおける骨代謝関連細胞の動態については未だ大部分が謎に包まれている。近年発達してきた二光子励起顕微鏡を用いた生体イメージング技術を用いると,生体組織を低侵襲で深部まで観察でき,組織固定の過程を経ずに「生きたまま」の骨内膜面を観察することができる。そのため,この技術は硬組織の観察において,新しい知見を得られる非常に有用なツールと言える。
 本稿では,当教室で行なっている骨芽細胞の生体イメージング(in vivoin vitro )について紹介するとともに,過去の報告を含め骨芽細胞イメージング最前線について概説する。
(上中麻希・水野紘樹・石井 優)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Topics
 生体骨イメージングの実際~骨細胞
 骨細胞は,骨を構成する細胞の大多数を占める一方,骨基質に埋没して存在するのみの細胞として考えられてきた。しかし近年,骨細胞の持つ多彩な機能が徐々に明らかにされ,骨自身が骨リモデリングの制御を担うばかりか,さらには多臓器とも連関する内分泌器官であると認識されるようになった。骨は運動器としてのみならず個体レベルでの解釈が必要とされつつある。しかし従来の解析手法では,硬い骨組織内に存在する骨細胞のリアルタイムな機能評価は困難であった。
 今回,二光子励起顕微鏡を用いて,生体内における骨組織内の骨細胞と,骨小腔-骨細管ネットワークのイメージングを試みたので紹介する。
(佐野博繁・近藤直樹・遠藤直人)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Topics
 生体骨イメージングの実際~造血幹細胞
 造血幹細胞は,骨髄内でニッチと呼ばれる特有の微小環境において維持されていると考えられている。近年の生体イメージング技術の発達により,マウス骨髄内の細胞を生きた状態で観察できるようになってきた。造血幹細胞の骨髄内での動態や,これらを支えるニッチとの経時的な位置関係を明らかにすることにより,造血はどのように制御されているのかを解明できるツールとなり得る。さらに,この技術を白血病細胞研究に進展することにより,その維持機構の解明など,白血病治療開発の発展につながる知見が得られる強力な手段となることが期待される。
 本稿では,造血幹細胞及び白血病イメージングに関する最近の知見を概説する。
(数藤孝雄・水野紘樹)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Therapy
 生体骨イメージングによる骨吸収抑制薬の作用解析
 現在,様々な骨吸収抑制薬が開発され臨床現場で汎用されているが,薬剤が生体骨組織内で実際にどのような効果を示すのか,生体内における薬理作用を細胞レベルで解析した報告は少ない。我々はこれまで,生体骨イメージング技術を用いて,生体骨組織内における破骨細胞の動態を可視化し,活性型ビタミンD製剤やビスホスホネート製剤をはじめとした骨吸収抑制薬の薬効を明らかにしてきた。
 本稿では,これらの研究成果について概説する。
(菊田順一・石井 優)

▲生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~:Therapy
 生体骨イメージングによる骨形成促進薬の作用解析
 副甲状腺ホルモン(PTH)製剤テリパラチドは骨粗鬆症治療薬として広く使用されている骨形成促進薬である。この薬剤は,生体内の骨リモデリングを制御することで骨形成促進作用を発揮すると考えられているが,その詳細なメカニズムは明らかではない。我々は最近,骨代謝の中心的な役割を担う成熟破骨細胞と成熟骨芽細胞の生体イメージング解析を行い,テリパラチドが両者の三次元的位置関係や細胞間相互作用をダイナミックに変化させることを明らかにした。
 これらの解析により,骨代謝に関わる細胞間ネットワークの理解がさらに進むことが期待される。
(森本彬人・菊田順一・古家雅之・石井 優)



血液フロンティア(Vol.28 No.2)
《特集・慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患》

〔企画・島根大学医学部附属病院 先端がん治療センター長/腫瘍・血液内科 教授 鈴宮淳司〕




▲慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
 序 ~急激に進歩する慢性リンパ性白血病(CLL)の分子病態研究と治療,そして課題~
 慢性リンパ性白血病(CLL)は,日本では稀な疾患であるが,欧米では多数の患者がいることから,多数のエビデンスレベルの高い臨床研究がなされている。本稿では,CLLの頻度,分子病態,病期分類の問題,予後予測モデル,標準治療に関して概説した。BTK阻害薬やPI3K阻害薬,そしてBCL-2阻害薬など新規薬剤が多数開発され,まさにCLL治療のパラダイムシフトが起こっている。しかし,患者の少ない日本では,研究や新規薬剤の導入が遅れがちである。
 CLL診療の今後の課題と日本で解決しなければならない問題も記載した。
(鈴宮淳司)

▲慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
 1.慢性リンパ性白血病(CLL)の分子病態
 慢性リンパ性白血病(CLL)は,高齢者に好発する欧米で最多の白血病であり,全世界で基礎および臨床研究が積極的に行われている代表的造血器腫瘍である。日本においても,欧米に比較して症例数は少ないものの近年の高齢化社会を迎え,その疾患としての重要性は増加している。近年の研究の進捗により,CLLの発症機構,遺伝子変異,CLL特異的治療標的分子等が明らかになってきており,その臨床予後を含めて現在,大きく変化をしてきている疾患と言える。本稿では,CLLの分子病態,特にその発症機構とCLL細胞におけるB-cell receptor(BCR)シグナルを中心に近年の研究の進捗を紹介したい。
(菊繁吉謙)

▲慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
 2.慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患(ヘアリー細胞白血病〔HCL〕,splenic lymphomaなど)の病理
 小型,中型の白血化を伴う悪性リンパ腫の病理鑑別診断として今回解説を行う。小型,中型リンパ球を主体とする低悪性度B細胞性リンパ腫は,① 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫,② マントル細胞リンパ腫,③ 濾胞辺縁帯リンパ腫,④ 濾胞性リンパ腫,⑤ リンパ形質細胞性リンパ腫,⑥ 有毛細胞性白血病などの疾患単位から成るが,構成する疾患単位は「低悪性度」という形容詞からか,比較的予後良好なリンパ腫と認識される傾向がある。しかし,あくまでも病理形態から小型が主体であるということであって,一部にはマントル細胞リンパ腫のように予後不良のものが含まれてくる。また,小型リンパ球を主体とするT細胞性悪性腫瘍には,⑦ T細胞前リンパ球性白血病や,⑧ T細胞大顆粒リンパ球性白血病がみられる。
(大島孝一・鈴宮淳司)

▲慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
 3.慢性リンパ性白血病(CLL)および類縁疾患のフローサイトメトリー(FCM)
 慢性リンパ性白血病(CLL)におけるフローサイトメトリー(FCM)には,現在2つの役割がある。一つは,ルーチンのFCM 解析で行われる診断のためのマーカー解析で,CLLとその類縁疾患の鑑別に有用である。マーカーの解析結果は典型例においては,診断上の困難はないが,非典型例では形態学や染色体,遺伝子検査の結果と合わせて検討する必要がある。もう一つは,研究検査としてのmulticolor FCM を用いた治療後の微小残存病変の解析である。欧州のERICのグループにより標準化がすすめられており,臨床効果の判定や予後予測に有用な情報をもたらすことが期待される。
(青木定夫)

▲慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
 4.慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患の鑑別診断
 慢性リンパ性白血病(CLL)は本邦で稀なB細胞腫瘍であり,診断のために類縁疾患(B細胞前リンパ球性白血病,脾辺縁帯リンパ腫,有毛細胞白血病〔HCL〕,有毛細胞白血病亜型,リンパ形質細胞性リンパ腫〔LPL〕,マントル細胞リンパ腫〔MCL〕)の鑑別が必要である。自然乾燥標本による形態観察,免疫学的形質の確認,染色体・遺伝子解析が重要であるが,HCLのBRAF V600E変異,LPLのMYD88 L265P変異,MCLのCCND1 転座は特異性が高い。CLL診断上,免疫組織化学によるLEF1陽性が有用である。
(瀧澤 淳・桐生真依子・河本啓介)

▲慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
 5.慢性リンパ性白血病(CLL)の予後因子:FISH法,遺伝子変異,病理学的観点から
 慢性リンパ性白血病は,一般に予後良好な低悪性度B細胞腫瘍と考えられている。ただし一部の症例は進行性で,治療抵抗性に至る予後不良群も存在し,その多様性が注目されている。以前より,Rai, Binetなどの臨床病期分類や,FISHなどで検出する17p欠失, 11q欠失などの染色体異常が予後因子として報告され,臨床現場でも応用されているが,近年,次世代シークエンス技術の発達により,NOTCH1SF3B1 をはじめとする様々な新規遺伝子異常が同定され,予後にも関係することが報告された。本稿では,それら予後因子となる染色体異常や遺伝子異常に加えて,病理学的観点からも概説したい。
(菊地智樹・中村直哉)

▲慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
 6.初発慢性リンパ性白血病(CLL)の治療
 慢性リンパ性白血病(CLL)は,血球減少症や活動性の症状・検査所見を呈した場合に治療適応となる。若年者を中心とする併存症・臓器障害の少ない未治療CLL患者では,フルダラビン・シクロホスファミド・リツキシマブ併用療法によりフルダラビン・シクロホスファミド療法に比べて生存期間の延長が示されている。特に免疫グロブリン重鎖遺伝子可変領域変異例では長期の無増悪生存が期待できる。高齢者では,経口アルキル化薬やベンダムスチン単剤療法などが治療選択肢となる。最近,海外では高齢者例やdel(17p)例を中心としてイブルチニブなどの新規治療薬の役割が確立しつつある。
(伊豆津宏二)

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 7.再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)の治療
 慢性リンパ性白血病(CLL)は欧米に比して日本では頻度の少ない疾患である。初発治療で寛解に到っても多くが再発する。再発・難治性CLLの治療は初回治療からの奏効期間とdel(17p)/TP53 遺伝子変異の有無が重要となる。近年,新規薬剤であるB細胞受容体(BCR)阻害薬(イブルチニブ,idelalisib)やBCL2阻害薬(venetoclax)が臨床の場に登場し,del(17p)/TP53 遺伝子変異などの高リスクのCLL患者に対しても,単剤または併用療法で効果を認めている。このためCLLの治療アルゴリズムが急速に変化しつつある。その中で位置付けは変わりつつあるが,若年者で適応があれば同種造血幹細胞移植も考慮される。
(三宅隆明・鈴宮淳司)







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