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CLINICAL CALCIUM 2018年6月号(Vol.28 No.6)

p7(747)


特 集 軟骨研究と変形性関節症 Preface


巻頭言~特集「軟骨研究と変形性関節症」にあたって~

齋藤  琢
Taku Saito

東京大学大学院医学系研究科整形外科学 准教授


 近年の少子化によって日本は未曾有の高齢社会になりつつあります。医学・医療の進歩も目覚ましく,確実に人口が減少するなか,高齢者が元気に活動することが強く期待されており,そのためには高齢者の運動機能の維持が不可欠です。骨粗鬆症と変形性関節症は高齢者の運動機能を低下させる二大変性疾患ですが,骨粗鬆症については長年の骨代謝研究の成果によって新薬が次々と登場し,適切に評価・予防・治療しうる疾患になりました。一方,変形性関節症は骨粗鬆症と比べると病態解明が遅れており,病態を制御しうる治療薬はいまだ登場していません。
 骨代謝研究が順調に発展してきたことには多くの理由があるでしょうが,軟骨研究と比較して考えると,基礎分野のみならず内科,整形外科,歯科など多くの臨床分野の研究者が骨代謝研究に参加してきたこと,実験動物と人間との間で共通した現象が多かったこと,骨の組織において骨代謝を直接制御する細胞の種類が限られていたことなどが挙げられるでしょう。関節は軟骨だけで出来ているわけではなく,軟骨下骨や靭帯,滑膜,半月板など多彩な要素から構成されていることも研究を複雑にしています。発症や進行が極めて緩徐であることから,疫学調査には長い年月を要しますし,治験を行う場合にも長い期間を要するでしょう。変形性関節症の主たる愁訴は痛みですが,痛みの原因も複雑で,まだ不明な点も多く残されています。実験動物を用いて研究を行うにも,二足歩行の人間と四足歩行の動物では異なる点も多いのではないかと危惧されますし,実験動物の関節の痛みを定量評価するのも一筋縄ではいきません。
 このように変形性関節症の克服には多くの困難が残されていますが,それを乗り越えるべく,多くの研究者や医師が様々なアプローチから研究を続けています。私は分子生物学の領域からこの課題に挑んできましたが,その領域の中だけでも数多くの研究者が多彩な切り口で研究を行っておられます。分子生物学以外の領域でも,疫学研究や画像解析,バイオメカニクス,再生医療や新薬開発,人工関節の改良など,変形性関節症と一口に言ってもその研究は実に多岐にわたる領域を包含しています。私自身も変形性関節症の病態を研究する中で,単独の研究だけで変形性関節症を克服することは不可能であると実感するに至り,領域を超えた協力が必要であるという思いを強くしています。
 本特集では,国内で軟骨あるいは変形性関節症の研究でご活躍されている素晴らしい先生方に執筆を依頼致しました。私や東京大学医学部整形外科のメンバーが日々ご指導頂いている先生も多く,全員が異なる視点で関節の生理と病理を洞察されています。本特集が次世代の軟骨・変形性関節症研究の発案の契機になればと願っています。





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