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医薬ジャーナル 2018年6月号(Vol.54 No.6)

p60(1396)~p69(1405)


MONTHLY PRESS




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企業活動


シャイアー6兆8,000億円で買収合意
世界トップ10の
製薬リーディングカンパニーに


武田薬品工業


 武田薬品工業は5月8日,アイルランドの製薬大手シャイアーを460億ポンド(日本円で約6兆8,000億円)で完全子会社化すると発表した。日本企業による海外企業の買収としては過去最高額となる。両社の売上高の合計は3兆円を超え,世界でトップ10に入る巨大製薬会社となる。
 シャイアーは新薬開発力が目覚しく,「アディノベイト®」,「アドベイト®」,「ファイバ」,「リクスビス」などの血友病関連治療薬や,ゴーシェ病治療薬の「ビプリブ®」,注意欠陥/多動性障害治療薬の「インチュニブ®」など,希少疾患治療薬を販売している。特に,米国での販売シェアは6割強を占める。
 今回の買収で武田薬品工業は,シャイアーが強みを持つ希少疾患や血漿分画製剤を獲得し,がん領域やワクチン開発を強化する。また,消化器系疾患領域,神経精神疾患領域でも相互に補完する。
 買収の成立には,両社の株主の同意が必要で,早ければ2019年上期の買収完了を目指している。今回の買収では,JPモルガン・チェース,三井住友銀行,三菱UFJ銀行が武田薬品工業との間で,308.5億米ドル(日本円で約3兆3,000億円)の融資枠を設ける。
 武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長は,「国際的な規模で,競争力を高めることができる。米国市場の拡大,研究開発力の強化を図る」と,買収の意義を語る。シャイアーのスーザン・キルスビー会長は「両社の統合により主力製品や新薬開発が拡大し,強力なバイオ医薬品企業ができる」とコメントした。
 世界の製薬会社の売上は,一位がロシュ(約5兆9,600億円),二位がファイザー(約5兆6,300億円),三位がノバルティス(約5兆3,000億円)。武田薬品工業の1兆7,000億円とシャイアーの1兆6,000億円を合わせると,3兆3,000億円規模となり,世界第九位となる見通し。

新社長に
Anish Bafna(アニシュ・バフナ)氏

バクスター


 バクスターは4月2日,同月1日付で,Anish Bafna(アニシュ・バフナ)氏が,代表取締役社長に就任したと発表した。
 バフナ氏は,インド出身。1993年に,同国のInstitute of Management Development and ResearchにてMBAを取得。以後24年以上にわたり,東南アジア,南アジア地域の医薬品,医療テクノロジーを含むヘルスケアビジネスでマーケティング,セールス,事業経営を担う。
 これまでにバフナ氏は,静脈注射液と医療機器を提供するCore Healthcare社にて,マレーシアとシンガポールの国代表を務めた。1996年から2006年までは医薬品やサプリメント,日用消費財を提供するMega Lifesciences社にて,インドネシアの国代表を含む数々の要職を務めている。その後,2006年にBaxter Healthcareに入社。これまでに同社のマレーシア,インドネシアの国代表,インドと南アジア地域代表としてビジネスを率い,成長に導いてきた。直近では2015年よりシンガポールで,7カ国から構成される同社のアジア新興市場地域代表を務めており,地域のビジネスを拡大した経験を有している。


ライフサイエンス業界初
研究者向けに「LINE」を活用した
サービス開始

メルク


 メルクは4月24日,コミュニケーションアプリ「LINE」を活用し,ライフサイエンス分野の研究者に役立つ情報配信サービス「LINE ID:@merck」を開始した。なお,ライフサイエンス業界で,LINEを通じて情報を提供するのは,メルクが初めて。
 日本のインターネット利用環境でスマートフォンがメインデバイスとなる中,国内月間アクティブユーザー数が7,300万人(2017年12月,LINE調べ)にのぼり,多くのスマホユーザーが利用するLINEを活用し,研究者に有益な情報を発信することで,より高い利便性を実現する。アカウントの友だち登録時にアンケートを実施することで,ユーザーはバイオテクロノジーやケミストリー,遺伝子工学といった研究分野や興味・関心に沿ったコンテンツ,製品・キャンペーン情報を入手できるようになるほか,AI(人工知能)チャットによるテクニカルサポートやカスタマーサポートで,より迅速な問題解決がいつでも可能になる。
 また,サイエンスに関連する情報を提供するブログ「サイエンス系お役立ちメディアM-hub」(http://m-hub.jp/)も同時に開設し,LINEのメニューと連動する。同ブログでは,主にサイエンスに関連する企業や大学の研究者を対象に,実験・分析プロトコル等の課題解決方法から,論文執筆や研究予算獲得のノウハウなど日々の研究活動に役立つ基礎知識,サイエンスの最新トレンドやインタビューなどのコラムを提供する。


大規模災害時に
安定したインターネット接続
『災害医療プラン』提供開始


スカパーJSAT


 スカパーJSATは5月1日,同社が提供している,衛星IPネットワークサービス「ExBirdサービス(エックスバードサービス)」に,新たに『災害医療プラン』を追加し,サービスの提供を開始した。
 2010年4月よりサービスを提供しているExBirdサービスは,衛星通信の特長である「対災害性」,「広域性」を活かして,災害時の地上回線バックアップ網,エネルギーインフラの遠隔制御用回線,デジタルデバイド地域での衛星インターネット回線など,多岐にわたる用途で活用されている。
 新たに追加する『災害医療プラン』は,災害時に医療・救護活動を行う関係機関・自治体を対象に,非常用通信手段として低価格で提供するサービス。大規模災害後の地上通信インフラへのダメージの影響を受けない衛星通信回線を用いて,音声通信と,災害時に情報集約拠点となる災害医療ポータルサイト「広域災害緊急医療情報システム(EMIS)」への,安定したインターネット接続を可能にする。
 同社は,2015年から5つの病院,医療機関,大学などと災害医療における衛星通信機能の検証を始め,2018年4月現在までに,11の共同研究パートナーと音声通信,電話会議,インターネット接続,緊急地震速報の受信,EMISへのインターネット接続などを検証してきた。『災害医療プラン』では,この検証結果を踏まえ,音声通信機能とEMISへのインターネット接続機能を最低限必要となる内容として厳選することで,多くの災害医療分野で導入できるよう低価格帯でのサービス提供を実現した。
  EMIS:Emergency Medical Information System。阪神淡路大震災後に誕生した災害医療ポータルサイト。


アジレント・テクノロジー:Lasergen買収で合意=アジレント・テクノロジーズ・インク(本社:米国,日本法人:アジレント・テクノロジー)とLasergen, Inc.(本社:米国)は4月3日,Lasergen社の残りの株式を1億500万米ドルでアジレント社が買い取ることに,両社が最終合意したと発表した。Lasergen社は,革新的なDNAシーケンシング技術の研究開発にフォーカスした新興バイオテクノロジー企業。
 2016年3月,アジレント社はLasergen社に最初の投資を行い,2年以内に残りの全株式を取得できる権利(コールオプション)付きで,全株式の48%を取得した。アジレント社はこの権利を行使する旨を,2018年2月23日に通知。両社は,Lasergen社のLightning TerminatorsTMケミストリーをベースとしてシーケンシング技術を活用し,クリニカルアプリケーション向けの次世代シーケンシングワークフローを構築するべく協業を進めてきた。Lightning TerminatorsTM は現在商用化されている他の技術と比較して,ゲノムシーケンシングを高速化,高精度化,低価格化できる可能性がある。
協和キリン富士フイルムバイオロジクス:マイラン社と「アダリムマブ」販売で提携=協和キリン富士フイルムバイオロジクスは4月11日,現在開発中の「FKB327」(開発番号)について,欧州での独占的販売権をマイラン社に付与すると発表した。同製剤は,関節リウマチ等に高い治療効果を持つヒト型抗TNF(tumor necrosis factor)- αモノクローナル抗体製剤「アダリムマブ」(製品名:ヒュミラ®)のバイオシミラー医薬品。協和キリン富士フイルムバイオロジクスが欧州で販売承認申請を行い,承認取得は2018年後半になる見込み。
 協和キリン富士フイルムバイオロジクスは,2012年3月27日に,富士フイルムと協和発酵キリンが設立したバイオシミラー医薬品の開発・製造・販売会社。現在,「FKB327」のほか,大腸がんや非小細胞肺がんなどに高い治療効果を持つ抗VEGF(vascular endothelial growth factor)ヒト化モノクローナル抗体製剤「ベバシズマブ」のバイオシミラー医薬品(開発番号:FKB238)も開発中。
エーザイ:非オピオイド系重度慢性疼痛治療薬「Prialt ®」に関する権利をRiemser社に譲渡=エーザイは4月23日,非オピオイド系重度慢性疼痛治療薬「Prialt ®」(一般名:ziconotide acetate)について,欧州での独占的開発権と販売権を,Riemser Pharma GmbH(本社:ドイツ)に譲渡すると発表した。
 エーザイは,2006年にElan Corporation PLC(当時)と締結した契約に基づき,同製剤の欧州での開発・製造・販売の独占的権利を獲得,非オピオイド系の髄腔内投与による重度慢性疼痛治療剤として欧州で販売してきた。Riemser社は,欧州全域に拠点を持ち,がん,神経,感染症などのニッチ領域での医療用医薬品の販売,流通に強みを有する。
塩野義製薬:生産グループ会社設立2019年事業開始=塩野義製薬は4月23日,同日開催された取締役会で,同社グループの生産関連機能を担う100%子会社を,2018年10月1日付で新設し,2019年4月1日より事業を開始すると発表した。
 新会社は「もの造り」のバリューチェーンの中核として,今後,生産技術の革新的な発展を進めていく。塩野義製薬が創製した新薬を,高い品質を確保しつつ,グローバルでも競争できる価格で製造し,国内外の市場に向けて安定供給していくことを目指す。
 また,医薬品の製造受託だけでなく,これまでの経験と高い専門力を活かして,治験薬製造・分析試験・医薬エンジニアリングなど受託ビジネスを展開していく。
大日本住友製薬:マラリア治療薬候補化合物の同定に関するMedicines for Malaria Ventureとの共同研究契約締結=大日本住友製薬は4月25日,Medicines for Malaria Venture(本社:スイス)と,マラリアの治療薬候補化合物の同定を目指した共同研究の実施に関する契約を締結したと発表した。
 共同研究は,2015年から両社が進めている「マラリアに対する化合物スクリーニングプログラム」が進展したものであり,同プログラムにより大日本住友製薬が所有する化合物ライブラリーから見出された化合物(ヒット化合物)を元に,マラリアの治療薬候補化合物(リード化合物)を同定する。これらは,いずれも公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund:Global Health Innovative Technology Fund)の助成案件に選定されている。
バイオジェン/IONIS社:より広範な神経科学領域の医薬品開発に向け戦略的提携拡大=バイオジェンとIONIS Pharmaceuticals(本社:米国)は4月26日,今後10年間の提携契約を通じて,両社の戦略的提携を拡大したと発表した。同契約は,広範な神経科学領域の疾患のために新規アンチセンス医薬品候補の開発を目的としたもの。この提携は,バイオジェンのニューロサイエンス研究と医薬品開発の専門知識と,IONIS社のRNAを標的とした治療薬開発のリーダーシップを活用することで,より広範なパイプラインの開発を目指すもの。
 両社は今後,治療選択肢の少ない認知症,神経筋疾患,運動障害,眼科学,内耳疾患,神経精神医学など,広範な神経科学領域の疾患をカバーするプログラムを進める。IONIS社はアンチセンス医薬品候補の同定を担当し,一方,バイオジェンは非臨床試験,臨床開発,製造,製品化を担当する。
協和発酵キリン/ウルトラジェニクス・ファーマシューティカル:成人・小児X染色体遺伝性低リン血症治療薬「Crysvita®」米国販売開始=協和発酵キリンと同社の欧州子会社であるKyowa Kirin International PLC(本社:英国,以下,協和キリンインターナショナル)と,ウルトラジェニクス・ファーマシューティカル(本社:米国)は5月7日,米国で「Crysvita ®」(欧米製品名,一般名:ブロスマブ)の販売を開始したと発表した。同製剤は,1歳以上の小児と成人へのX染色体遺伝性低リン血症(XLH)を適応症として,2018年4月17日(米国時間)付で,米国食品医薬品局(FDA)により承認された。米国で,XLHの治療薬として承認されたのは初めてで,患者数は約12,000人と推定されている。
MSD/杏林製薬:「ナゾネックス®点鼻液50μg」の独占販売権契約を締結=MSDの関連会社と杏林製薬は5月10日,MSDが製造販売をしている定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス®点鼻液50μg」について,独占販売権に関する契約を締結したと発表した。同製剤は,季節性および通年性アレルギー性鼻炎の治療薬として,世界約130の国と地域で承認・発売されている。国内では,2008年にMSDが販売を開始し,2016年11月からMSDと杏林製薬が共同でプロモーションを行っている。この契約により杏林製薬は,2018年8月1日から国内での単独販売を開始する。製造販売承認は,引き続きMSDが保有する。
札幌医科大学/イーライリリー・アンド・カンパニー:新規腫瘍特異的変異抗原(新規ネオアンチゲン)の探索に関する共同研究契約を締結=北海道公立大学法人 札幌医科大学と日本イーライリリーは5月11日,同大学とイーライリリー・アンド・カンパニー(本社:米国。以下,米国リリー社)が,がん免疫療法での新しいアプローチとして,新規腫瘍特異的変異抗原の探索に関する共同研究契約を締結したと発表した。今後両者は,がんに対する画期的ながん抗原を共同して探索し,米国リリー社は札幌医科大学の経験やノウハウを活用することで,新規治療薬の研究開発へとつなげていく。中期的な事業目標として,2020年までに日本発の創薬シーズの世界同時開発に着手することを目指す。




新製品


ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤
『ファセンラ®皮下注30mgシリンジ』

アストラゼネカ


 アストラゼネカは4月18日,ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤『ファセンラ®皮下注30mgシリンジ』(一般名:ベンラリズマブ[遺伝子組換え])を発売した。適応症は,既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る気管支喘息。
 同製剤は,ADCC(抗体依存性細胞傷害)活性により,ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が,血中,気道の好酸球を直接的かつ速やかに除去するヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤。第I相試験により,好酸球が24時間以内に速やかに除去されることが確認されている。また,気道組織中,喀痰中の好酸球も除去することが確認されている。
 針刺し防止機能付きプレフィルドシリンジの注射剤で,初回,4週後,8週後に皮下に注射し,以降,8週間隔で皮下に注射する。米国,欧州,日本,オーストラリア,カナダで承認され,その他数カ国で承認申請中。
 日本では約800万人が喘息に罹患していると推定されているが,そのうち5~ 10%の患者が,高用量の吸入ステロイド薬(ICS)に加えて,その他の長期管理薬および/または全身性ステロイド薬による治療を要する,あるいはこうした治療にも関わらずコントロール不良の重症喘息であると言われている。
 また,重症喘息患者の約50%で好酸球値が高い傾向があり,好酸球レベルの上昇によって気道炎症や気道過敏性が引き起こされ,その結果,喘息増悪や呼吸機能が低下し,喘息増悪リスクが上昇,喘息が重症化する。既存の喘息治療では症状コントロールができず,頻回の喘息増悪や呼吸機能の低下,生活の質(QOL)の著しい低下を余儀なくされている重症喘息患者に,新しい治療選択肢が待ち望まれてきた。
<薬価>ファセンラ®皮下注30mgシリンジ = 351,535.00円/1筒


抗悪性腫瘍剤/ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤
『イストダックス®点滴静注用10mg』

セルジーン


 セルジーンは4月18日,ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤『イストダックス®点滴静注用10mg』(一般名:ロミデプシン)を発売した。適応症は,再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)。
 同製剤は,従来の再発または難治性のPTCL治療とは異なる新しい作用機序を有し,同適応症では日本で初めてのHDAC阻害剤となる。腫瘍細胞内のHDACクラスIを低濃度で阻害する。ヒストン等の脱アセチル化を阻害することによって,腫瘍細胞の細胞周期停止や,アポトーシスを誘導し,その結果,腫瘍増殖を抑制すると考えられている。
 PTCLは,悪性リンパ腫の一つで,月単位で病勢進行する予後不良の難治性疾患。再発後のPTCLに対する明確な標準治療は確立されておらず,治療選択肢も限られているため,新たな治療薬の登場が強く望まれてきた。
 同製剤は,PTCL患者を対象とした国内第I/II相臨床試験で,奏効割合(部分寛解[PR]以上)は42.5%(95%信頼区間:27.180~ 57.820%),完全奏効割合は25.0%(同:11.581~ 38.419%)だった。主な副作用は,血小板減少症,リンパ球減少症,白血球減少症,好中球減少症,味覚異常,悪心,食欲減退など。
<薬価>イストダックス®点滴静注用10mg= 109,753.00円/10mg1瓶


抗悪性腫瘍剤/抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体
『テセントリク®点滴静注1200mg』

中外製薬


 中外製薬は4月18日,抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体『テセントリク®点滴静注1200mg』(一般名:アテゾリズマブ[遺伝子組換え])を発売した。適応症は,切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん。
 同製剤は,腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に発現するタンパク質であるPD-L1(Programmed Death-Ligand 1)を標的とする免疫チェックポイント阻害剤。PD-L1は,T細胞の表面上に見られるPD-1,B7.1の双方と結合しT細胞の働きを阻害する。
 この結合を阻害しT細胞の抑制状態を解除することで,T細胞による腫瘍細胞への攻撃を促進すると考えられている。
 日本では,肺がんの年間罹患者数は約128,700人(男性86,700人,女性42,000人,2017年予測値)と推計されている。また,国内の年間死亡者数は約78,000人(男性55,600人,女性22,400人,2017年予測値)であり,がんによる死亡原因の第1位(女性は2位)となっている。
<薬価>テセントリク®点滴静注1200mg = 625,567.00円/1バイアル


プロトンポンプ阻害剤
『ネキシウム®懸濁用顆粒分包10mg,同20mg』

アストラゼネカ/第一三共


 アストラゼネカと第一三共は4月18日,プロトンポンプ阻害剤『ネキシウム®懸濁用顆粒分包10mg,同20mg』(一般名:エソメプラゾールマグネシウム水和物)を発売した。
 同製剤は,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,吻合部潰瘍,逆流性食道炎,非びらん性胃食道逆流症,Zollinger-Ellison症候群,非ステロイド性抗炎症薬投与時の胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制,低用量アスピリン投与時の胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制,ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助を効能・効果とする「ネキシウム®カプセル10mg,同20mg」の新剤形。水に懸濁して服用するため,低年齢の小児患者への投与が可能となり,高齢患者など嚥下が難しい患者の服薬アドヒアランスの向上にもつながることが期待される。
 製造はアストラゼネカが,流通・販売は第一三共が担当し,両社がコ・プロモーションを行う。
<薬価>ネキシウム®懸濁用顆粒分包10mg= 80.60 円/1包,同20mg= 140.30円/1包


小腸コレステロールトランスポーター阻害剤/HMG-CoA還元酵素阻害剤の配合剤
『アトーゼット®配合錠LD,同配合錠HD』

MSD/バイエル薬品


 MSDとバイエル薬品は4月23日,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤とHMG-CoA還元酵素阻害剤の配合剤である『アトーゼット®配合錠LD,同配合錠HD』(一般名:エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム水和物)を発売した。適応症は,高コレステロール血症,家族性高コレステロール血症。
 同製剤は,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤「エゼチミブ」(製品名:ゼチーア®錠)とHMG-CoA還元酵素阻害剤「アトルバスタチンカルシウム水和物」を含有する配合剤。エゼチミブは,小腸でコレステロールの吸収に関与する蛋白質であるNiemann-Pick C1 Like1のコレステロール輸送機能を阻害することにより,小腸からの胆汁性と食事性コレステロールの吸収を阻害する。アトルバスタチンは,肝臓でのコレステロールの生合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を選択的かつ競合的に阻害し,コレステロールの生合成を阻害する。
<薬価>アトーゼット®配合錠LD= 177.00円/1錠, 同配合錠HD= 177.00円/1錠


多剤耐性肺結核治療薬
『サチュロ®錠100mg』

ヤンセンファーマ


 ヤンセンファーマは5月8日,成人の多剤耐性肺結核治療薬『サチュロ®錠100mg』(一般名:ベダキリンフマル酸塩)を発売した。
 同製剤は,ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメント社が創製したジアリルキノリン系の新規抗結核薬。既存の抗結核薬とは異なる作用機序を有し,結核菌のエネルギー生成に必須であるアデノシン5'-三リン酸(ATP)合成酵素を特異的に阻害し,増殖期と休眠期の結核菌のいずれに対しても強い殺菌活性を示す。また,希少疾病用医薬品として指定されている。
 多剤耐性肺結核は治療選択肢が限られている上に,菌陰性化後も18カ月間の継続的な長期間の投与が必要であることから,既存の抗結核薬と交差耐性を示さない,高い有効性,安全性と忍容性を示す新薬を含む併用療法の開発が緊急の課題となっている。
<薬価>サチュロ®錠100mg= 21,872.50円/1錠



海外申請情報


[ファイザー:ダコミチニブ]
 米国ファイザーは4月17日,米国食品医薬品局(FDA)が上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)活性化変異を有する局所進行性または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の一次治療薬として,不可逆的汎ヒトEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である「ダコミチニブ」(一般名)の承認申請を受理し,優先審査品目に指定したと発表した。また,欧州医薬品庁(EMA)も同適応症を対象としたダコミチニブの販売承認申請を受理した。
 今回の申請は,ダコミチニブ(n= 227)とゲフィチニブ(n= 225)を直接比較した国際共同第III相ARCHER1050試験の結果に基づいている。同試験では,ダコミチニブはゲフィチニブと比較して,臨床的に意味のある改善をもたらすことが示唆された。盲検下での独立中央判定(BICR)の評価によるPFSの中央値は,ゲフィチニブ群では9.2カ月,ダコミチニブ群では14.7カ月だった。この結果は,EGFR活性化変異を有する局所進行性または転移性NSCLCの一次治療として,ダコミチニブはゲフィチニブと比較して疾患進行または死亡リスクを41%低下させた(HR= 0.59[95%信頼区間:0.47~ 0.74],p< 0.0001)ことを示している。
 ダコミチニブ群で多く認められた有害事象は,下痢(87%),爪の変化(62%),発疹/ざ瘡様皮膚炎(49%),口内炎(44%)。グレード3の有害事象は,発疹(14%)と下痢(8%)だった。グレード4の有害事象は2%に認められ,グレード5の下痢と肝疾患が各1例に認められた。薬剤と関連のある有害事象による投与中止は,ダコミチニブ群で10%,ゲフィチニブ群で7%に認められた。
[ブリストル・マイヤーズ スクイブ:オプジーボとヤーボイの併用療法]
 ブリストル・マイヤーズスクイブ(本社:米国)は5月3日,腫瘍遺伝子変異量(TMB)が10変異/メガベース(mut/Mb)以上のファーストラインの転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者に対する,オプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)の併用療法の適応追加承認について,欧州医薬品庁(EMA)に,申請を行ったと発表した。
 今回の申請は,ファーストラインの進行NSCLC患者を対象に,扁平上皮がんと非扁平上皮がんの両方の組織型にわたり,オプジーボを含むレジメンと化学療法を比較評価した国際共同第III相臨床試験「CheckMate-227試験」のPart 1のデータに基づいている。現在,同社はオプジーボの単剤療法または他のがん免疫療治療薬などとの併用療法による350以上の臨床試験を遂行している。
 日本では,小野薬品工業が2014年9月に根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬として発売。その後,2015年12月に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん,2016年8月に根治切除不能または転移性の腎細胞がん,2016年12月に再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫,2017年3月には再発または遠隔転移を有する頭頸部がん,2017年9月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する承認を取得した。また,悪性胸膜中皮腫,悪性黒色腫の術後補助療法などについても承認申請しており,食道がん,食道胃接合部がん,小細胞肺がん,肝細胞がん,膠芽腫,尿路上皮がん,卵巣がん,胆道がんなどを対象とした臨床試験も実施中。現在,オプジーボは,日本,韓国,台湾,米国,欧州連合を含む60カ国以上で承認されている。


海外承認情報


[アステラス製薬:ミラべグロンとソリフェナシンの併用療法]
 アステラス製薬は5月8日,切迫性尿失禁,尿意切迫感,頻尿の症状を伴う過活動膀胱(OAB)を適応とするコハク酸ソリフェナシン(一般名)へのミラベグロン(一般名)の追加併用について,米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得したと発表した。
 米国では,ミラベグロンは「Myrbetriq ®」,ソリフェナシンは「VESIcare ®」の製品名で販売されており,いずれも切迫性尿失禁,尿意切迫感,頻尿の症状を伴うOABを適応とする単剤での使用が,FDAに承認されている。
 FDAへの承認申請は,グローバル第III相臨床試験「SYNERGY I,SYNERGY II,BESIDE」のデータに基づいて行った。これらの試験では,ミラベグロンとソリフェナシンの併用療法を各薬剤単独療法あるいはプラセボと比較・評価した。
[アストラゼネカ/メルク・アンド・カンパニー:リムパーザ®錠]
 アストラゼネカ(本社:英国)とメルク・アンド・カンパニー(本社:米国,北米以外はMSD)は5月8日,欧州医薬品庁(EMA)がリムパーザ®錠(一般名:オラパリブ,300mg1日2回投与)をBRCA 遺伝子変異の有無を問わず,プラチナ製剤を含む化学療法に対し完全奏効あるいは部分奏効を示しているプラチナ製剤感受性再発高悪性度上皮卵巣がん,卵管がんもしくは原発性腹膜がん患者での維持療法として承認したと発表した。
 今回の承認は,リムパーザ®がプラセボとの比較でプラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者の病勢進行または死亡のリスクを低減することを示したSOLO-2試験と試験19の2本の無作為化試験に基づいている。



国内申請情報


[アステラス製薬:FLT3/AX阻害剤ギルテリチニブフマル酸塩]
 アステラス製薬は4月23日,FLT3/AXL阻害剤ギルテリチニブフマル酸塩(一般名,開発コード:ASP2215)について,成人の再発/難治性FLT3 (FMS-like tyrosine kinase 3)遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病の治療薬として,製造販売承認申請を行ったと発表した。また,米国でも,同様の対象疾患に対する承認申請を米国食品医薬品局(FDA)に行っている。
 急性骨髄性白血病(AML:Acute Myeloid Leukemia)は血液と骨髄に影響を及ぼし,高齢者が多く罹患するがんであり,加齢とともに患者数が増加する。日本では毎年約5,500人が新たにAMLと診断される。がん細胞の増殖に関与する受容体型チロシンキナーゼであるFLT3とAXLを阻害する同製剤は,AML患者の約1/3で認められる活性化変異(遺伝子内縦列重複変異[ITD:Internal Tandem Duplication]とチロシンキナーゼドメイン変異[TKD:Tyrosine Kinase Domain])FLT3をともに抑制する。
 同製剤は,2015年10月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており,日本での製造販売承認申請が世界で初めての申請となる。日本での製造販売承認申請には,成人の再発/難治性FLT3 遺伝子変異陽性AML患者を対象とした第III相ADMIRAL試験のデータが含まれる。
[ギリアド・サイエンシズ:ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠]
 ギリアド・サイエンシズは5月15日,非代償性肝硬変患者と直接作用型抗ウイルス剤(DAA)治療不成功の患者に対する,1日1回投与のC型肝炎ウイルス(HCV)感染症治療薬である,ソホスブビルとベルパタスビルの配合錠(SOF/VEL)(一般名)について,製造販売承認の申請を行ったと発表した。
 ソホスブビルは,2015年3月にソバルディ®錠400mgとして承認された核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤。今回申請したSOF/VELは,NS5A阻害作用を有する新有効成分であるベルパタスビルを配合した新医療用配合剤。SOF/VELは現在,米国とEU(欧州連合)等で承認を取得し,「Epclusa®」の製品名で販売されている。現在,国内で非代償性肝硬変を伴うHCV感染症に対して承認された治療薬はない。申請時に提出したデータでは,C型非代償性肝硬変患者(CPT分類BまたはC)を対象とした国内第III相試験「GS-US-342-4019試験」で,SOF/VELを12週間投与した結果,92%(47/51例)の患者がSVR12(治療終了後12週時点のウイルス量が検出限界未満)を達成した。また,DAAによる前治療不成功のジェノタイプ1型または2型の患者を対象とした別の国内第III相試験「GS-US-342-3921試験」で,SOF/VELとリバビリンを24週間併用投与した結果,97%(58/60例)の患者がSVR12を達成した。


国内承認情報


[MSD:アイセントレス®錠600mg]
 MSDは5月14日,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)インテグラーゼ阻害剤「アイセントレス®錠600mg」(一般名:ラルテグラビルカリウム)について,「HIV感染症」の効能・効果で,製造販売承認を取得したと発表した。同製剤は,世界で初めてのHIVインテグラーゼ阻害剤であり,2008年6月に日本で承認された。以来,HIV感染症の治療薬「アイセントレス®錠400mg」の製品名で,成人に対して1日2回(1回1錠)の経口投与の用法・用量で使用されている。今回の承認は,新たな製剤である600mg錠の,1日1回(1回2錠)の経口投与の用法・用量となる。HIVインテグラーゼは,HIVウイルスの複製段階で,HIVのDNAが宿主のDNAに組み込まれる過程を触媒する酵素。ラルテグラビルカリウムはHIVインテグラーゼを阻害することにより,HIVウイルスの新たな複製を抑制する。
 HIV感染症は,HIVがCD4陽性リンパ球などの免疫担当細胞に感染することで,免疫系が徐々に破壊されエイズ(免疫不全状態)を発症する進行性の疾患。国内では,HIV感染者の新規報告件数は,2008年に1,126件のピークに達した後も,毎年1,000件以上が報告されている。また,エイズ患者の新規報告件数も毎年400件以上が報告されている。
 「アイセントレス®錠600mg」は,「アイセントレス®錠400mg」と同様に食事の有無に関わらず投与することが可能であり,さらに1日1回投与という利便性により,患者の服薬負担の軽減や服薬アドヒアランスの向上への貢献が期待される。



トピックス


感染症動向「麻しん」
●国内の動向:最初の報告は2018年3月23日で,沖縄県内を旅行中の台湾からの旅行客が麻疹と診断された。2018年は5月16日時点での累積感染者数は149人で,報告があったのは,沖縄県(85),愛知県(24),東京都(11),神奈川県(8),福岡県(6)など。年齢別に見た感染者の割合は,20歳未満が28%,20歳代24%,30歳代32%,40歳代13%,50歳以上3%となっている。
●海外の動向:2018年4月13日付で欧州疾病対策センター(ECDC)から公表された麻しん患者発生情報では,ルーマニアで1,709人,ギリシアで1,463人,フランスで1,346人,イタリアで411人報告されており,死亡者も13人を数える。3月と比べて,フランスで3倍,イタリアで2倍を超える患者が発生しており,日本人観光客もよく訪れる国々なので,感染への注意が必要となる。麻しんが多く発生している地域は,いまだに多いことから,あらかじめ麻しんの予防接種歴を確認し,麻しんの予防接種を2回受けていない場合,または接種既往が不明の場合には,渡航時に予防接種を受けることが奨められる。万一当地で罹患した場合は,旅行中であっても移動制限がかかることになり,十分な注意が必要だ。
●麻しん流行の原因:麻疹ウイルス(ParamyxovirusMorbillivirus 属)によって引き起こされる感染症で,空気感染,飛沫感染,接触感染によって,人から人にうつる。その感染力はウイルスの中で最も強く,麻しんを発症している人と同じ部屋にいるだけで(空気)感染するという。また,免疫を持っていない人が感染すると,ほぼ100%発症し,肺炎や脳炎などの重い合併症を起こすこともある。2014年の新感染症法で麻しんは5類感染症に分類され,原則として,医師は臨床診断後直ちに最寄りの保健所への届出と同時に,医療機関における血清IgM(免疫グロブリンM)抗体検査等の血清抗体価の測定の実施および地方衛生研究所におけるウイルス遺伝子検査等の検体の提出を求められている。
●典型的な臨床経過
・カタル期:感染後,10~ 12日の潜伏期間を経て発症する。38℃前後の発熱が2~4日間続き,倦怠感があり,風邪症状に似た上気道炎症状(咳嗽,鼻漏,咽頭痛)と結膜炎症状(結膜充血,眼脂,羞明)が現れ,次第に増強する。感染力が最も強い時期。
・発疹期:カタル期での発熱が1℃程度下降した後,再び高熱(多くは39.5℃以上)が出る(2峰性発熱)とともに,特有の発疹が耳後部,頸部,前額部に出現し,翌日には顔面,体幹部,上腕に広がり,2日後には四肢末端にまで及ぶ。発疹が全身に広がるまで,発熱(39.5℃以上)が3~4日間続く。発疹は鮮紅色扁平であるが,まもなく皮膚面より隆起し,融合して不整形斑状(斑丘疹),次いで暗赤色となり,やがて退色する。カタル症状が一層強くなり,特有の麻疹様顔貌を呈する。
・回復期:発疹出現後3~4日間続いた後解熱し,全身状態が改善してくる。合併症のない限り7~ 10日後には回復する。気道からのウイルス分離は,カタル期の発熱時に始まり,第5~6発疹日以後(発疹の色素沈着以後)は検出されない。なお,麻しんは第2種学校感染症により,原則,解熱後3日を経過するまで出席停止となる。
●治療:対症療法。
●予防:空気感染するので,手洗い,マスクのみで予防することはできない。唯一有効な予防法は,ワクチンの接種によって麻疹に対する免疫を獲得することに限られ,2回のワクチン接種により,麻疹の発症のリスクを最小限に抑えることが期待できる。
【参考資料】
・厚生労働省検疫所ホームページ http://www.forth. go.jp/topics/2018/04201102.html
・国立感染症研究(麻しん) https://www.niid.go.jp/ niid/ja/diseases/ma/measles.html



新刊書


『抗菌薬が効かなくなる ~ AMR(薬剤耐性)との闘いに人類は勝てるのか?~』

忽那賢志〔監訳〕/井上 肇・長谷川 学〔編集〕


 丸善出版は,AMR(薬剤耐性)の脅威と対策を訴えて英国で2013年に出版された『The Drugs Don't Work A Global Threat』(Prof. Sally C.Davis〔英国保健省局長〕ほか)を,このほど翻訳・編集・発行した。
 病原菌がたやすく国境を越えるようになった今,AMRは地球全体の課題。現時点で既に薬が効かない状況が深刻化している中,このまま対策が講じられることがなければ2050年には耐性菌による死亡はがん死を超え,世界で1千万人に達するとの予想もある。
 本書は,“抗菌薬を再び機能させる”ため,医師は自らの抗菌薬処方などを見直すこと,また患者側も自己判断によって抗菌薬の服薬を勝手に中断したりという行動がないか点検することを呼びかけている。
 本書を手にした読者の行動変容を,真摯に訴える1冊。
▷A5判/112頁/1,900円+税(丸善出版)


日本薬学会第138年会
シンポジウムオーガナイザーとして


 川上美好(北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター臨床薬学〔保険薬局学〕講師)
 大島崇弘(株式会社大島薬局代表取締役常務)


 2018年3月25日(日)~ 28日(水),石川県金沢市にて開催された日本薬学会第138年会での,一般シンポジウム「『健康サポート薬局』と米国からみた『予防』薬学における新たな可能性」(オーガナイザー:北里大学 川上美好,大島薬局〔神奈川県藤沢市〕大島崇弘)について紹介する。
 健康サポート薬局には,地域住民の健康意識を高め健康寿命の延伸に貢献すること,安心して立ち寄りやすい身近な存在となり他職種と連携して,薬以外の健康に関する相談にも応じることが求められている。
 今回,日本における「健康サポート薬局」の現状と取り組みを改めて理解し,今後の日本における「健康サポート」と「予防」薬学における新たな可能性について,5人のシンポジストによる講演をまとめた。



■今回のシンポジウムの主旨を含めて
 北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター
 臨床薬学(保険薬局学)教授 吉山友二氏

 今後多くの薬局が,健康サポート薬局として標準化されていくものと予想されるが,外国の現状を知り,新たな可能性を見据えた上で日本での健康サポートを推し進めていくことも重要であると考える。薬局で予防接種を実施し,薬局関連の教育・研究でリードしている米国の現状と取り組みについて知ることは,将来の地域における薬剤師職能の発展に多いに役立つ情報になると考える――と述べた。

■かかりつけ薬剤師・薬局と健康サポート薬局の展望
 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課薬事企画官
 紀平哲也氏

 今回のシンポジウムの基調講演とも言える内容であった。
 厚生労働省では,地域包括ケアシステムの構築を推進している。薬剤師にも専門とする薬学的管理の観点から,その一翼を担う役割が求められている。また,薬剤師の役割として,日頃から患者に寄り添い継続的に関わることでいつでも相談があれば気軽に応じること,薬局では,かかりつけ薬剤師により薬学的管理を実践するための機能を持つことが求められている。健康サポート薬局は,要指導医薬品や一般用医薬品に関する相談を含めた健康の維持・増進に関する相談に対して,より詳しく対応することができる。またその際,必要に応じて受診勧奨を行うなど,適切な専門職種や関係機関に紹介することも重要な役割として位置付けられている。
 今後,健康サポート薬局が全国各地に拡がり,地域の薬局を先導・支援することで,薬局が多職種,関係機関との連携体制が構築されるであろう。そして薬局が住民・患者にとって身近な相談場所の一つとして,機能をしっかりと果たしていくことを期待したい。
 また,薬剤師の対人業務は疾病治療への貢献が目的であり,薬学的な知識や技能を元に,投薬後も服用できているかどうか,問題は発生していないかなどのフォローアップを十分に行い,必要に応じて医師にフィードバックしたり,処方変更を提案することが求められている――と述べた。

■日本薬剤師会における「健康サポート薬局への取り組み」
 日本薬剤師会会長 山本信夫氏

 日本薬剤師会では会の創設以来,わが国における医薬品提供体制の在り方を,欧州を参考にしたシステムを目指してきた。わが国では医薬分業という言葉で表される地域への医薬品提供体制は,専ら医師による処方せんの発行とその応需と捉えられてきた。しかしながら,患者や住民が医薬品を安心・安全に使うためには,医療に直結する処方せん調剤と同時に,セルフケア・セルフメディケーションに不可欠なOTC(over the counter)薬の供給の一元的管理も求められる。より効果的で安全な医薬品使用の環境を整備するにおいて,患者のための薬局ビジョンが公表され,その中で2025 年における地域薬局の姿として健康サポート薬局が提唱されている。このビジョンに示された薬局の姿は,日薬が長年目指してきた薬局と同じ方向性を持ったものでもある。
 そして,健康サポート薬局は当面1万5,000を目標に増やしたいが,「隣の薬局がこの看板を下げているから,うちも」というのではなく,覚悟を決めて「健康サポート薬局になろう」という思いがなければならない――と述べた。

■ Public Health Initiatives and Disease Prevention by Community Pharmacists in the US:Now and in the Future
 米国アイオワ大学薬学部 Jay D. Currie氏

 はじめに,米国の薬局の業務内容や教育について説明した後に,地域における活動について語られた。薬剤師による血圧,血糖値,骨密度などのヘルススクリーニングや,健康に関する教育,子供への教育,インフルエンザや肺炎球菌の予防接種の実施など,幅広い活動についても紹介した。今後の日本の薬剤師の在り方についてのヒントとなる情報提供であった。

■地域に根差したかかりつけ薬局における健康サポートの実践
 大島薬局 大島崇弘(オーガナイザー)

 地域コミュニティに根差す活動をするためには,さまざまな地域連携が必須であり,健康サポート薬局制度は地域連携を深めるための好機であると捉えている。しかし,今後の調剤報酬制度に反映されるのではないかとの憶測等により,あたかも届出をすることが目的化している薬局も多いように感じられる。当然のことながら,健康サポート薬局がどういった機能を発揮できるかが重要なことであり,地域コミュニティにおいて健康サポート薬局が積極的に機能することで,地域包括ケアシステムの中で重要な役割を発揮するものと考えている。個々の薬局の取り組みに加えて,地域単位での取り組みも肝要であり,地域薬剤師会が中心となって地域コミュニティに積極的に関与していく必要がある。
 また,地域の薬剤師としての実践内容(健康教室の実施や認知症サポーター養成,認知症カフェへの参画,医療機関と連携した栄養指導や居宅患者への診療同行)などについても紹介した。



 今回のシンポジウムにより,日本におけるかかりつけ薬剤師・薬局,健康サポート薬局の歴史,現状,取り組みについて改めて理解できた。健康サポート薬局は,新しい制度ではあるが,その内容は決して新しいものではなく,地域で以前より行っていた当たり前のことであると再認識できた。また,この講演は,日本における今後の薬局の新たな可能性が感じられる貴重な機会となった。


6月の主な学会と開催情報
学会名  会期  会場/開催地  会長  テーマ  ホームページ
第54回日本肝臓学会総会  6月14~15日  大阪国際会議場ほか(大阪府)  西口修平(兵庫医科大学内科学肝胆膵科教授)  肝臓学の変革に挑む~新天地へ船出  http://www2.convention.co.jp/jsh54/

第60回日本老年医学会学術集会  6月14~16日  国立京都国際会館(京都府)  横出正之(京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター早期臨床試験部教授)  豊かな高齢社会に向けた老年医学の新たな暦をめくる  http://www.congre.co.jp/rounen2018/index.html

第23回日本緩和医療学会学術大会  6月15~17日  神戸国際会議場(兵庫県)  木澤義之(神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科特命教授)  緩和ケアとEOL(End of Life)ケアの質を見直す  http://jspm2018.umin.jp/index.html

第34回日本DDS学会学術集会  6月21,22日  長崎ブリックホール(長崎県)  柳原克紀(長崎大学病院検査部教授)  DDSがつくる,医療の未来  http://www.c-linkage.co.jp/34dds/

第22回日本医療情報学会春季学術大会シンポジウム2018 in新潟  6月21~23日  朱鷺メッセ(新潟県)  赤澤宏平(新潟大学医歯学総合病院医療情報部)  医療情報学の再発見~研究の多様化の中で今なすべきことは?~  http://www.jami2018symp.org/

第63回日本透析医学会学術集会・総会  6月29日~7月1日  神戸国際会議場ほか(兵庫県)  中西 健(兵庫医科大学内科学腎・透析科教授)  腎甦絶技  http://www2.convention.co.jp/63jsdt/







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