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CLINICAL CALCIUM 2018年7月号(Vol.28 No.7)

p7(889)


特 集 肥満・やせと骨・カルシウム代謝 Preface


巻頭言~体重・体組成と骨強度との複雑な関係~

井上 大輔
Daisuke Inoue

帝京大学ちば総合医療センター第三内科 教授


 従来より肥満は骨に対して保護的に作用すると考えられてきた。かつては肥満を伴う2型糖尿病も骨粗鬆症にはならないと信じられていた。しかしこの10~15年間の研究の進歩により,少なくとも2型糖尿病患者は骨密度が高値を示すにもかかわらず骨折率が高いことが確立された。一方,「肥満」そのものが非糖尿病者や糖尿病患者の骨代謝にどのような影響を及ぼすかについては未だ不明な点が多い。逆に「やせ」は明らかな骨折リスク因子となる。
 骨は筋肉,脂肪と並ぶ主要な体組成成分である。従って,理由はともかくとして,これら3者が(正常な)線形関係を保っている間は,体重に対して骨組織が占める重量の割合は一定であるのが自然と思われる。実際,DXA(dual X-ray absorptiometry)で測定した骨密度はBMI(body mass index)とかなり強く正相関を示すことが知られている。
 しかし骨密度とBMIとの関係は単純ではない。それは筋肉・脂肪の質と量のvariationにも起因する。たとえば骨密度は単なる体重よりも除脂肪体重と強く関連する。また同じ脂肪でも内臓脂肪の量は骨密度とむしろ負に相関する。筋肉・脂肪と骨との複雑な関係にはmyokineやadipokineと総称される諸種の液性因子や,成長ホルモン,インスリン,性ホルモン,グルココルチコイド,ビタミンDなどの内分泌因子,物理的・力学的相互作用などが関与する。近年,健康寿命延伸のためにはosteopenia/osteoporosisとsarcopeniaに対する対策が最重要課題の一つとされており,筋肉・脂肪と骨との複雑な相互関係についての研究が精力的に進められている。
 BMIと骨強度との関係はさらに複雑である。一般に正常以下の「やせ」は,BMIの低下にほぼ比例して骨折率を増加させる。一方,肥満は骨密度を増加させるにもかかわらずそれに見合うほどの骨折率低下をもたらさない。したがって肥満は何らかの形で「骨質」の劣化をきたすと考えられる。
 最近,SGLT2阻害薬や減量手術のように肥満・糖尿病患者の体重を減少させる画期的な治療が可能になってきた。これらの新しい治療は代謝面からは大きな福音である反面,骨粗鬆症に対する懸念が高まってきた。栄養学的観点からも,肥満/糖代謝異常と骨粗鬆症が併存している患者に対する理想的な栄養指導法は確立されていない。
 本特集では肥満・やせが骨に及ぼす複雑な影響について,第一線で活躍されている臨床医あるいは研究者の方々に様々な観点からのレビューや解説をお願いした。肥満,代謝異常症,osteopenia/osteoporosis,sarcopeniaの包括的な治療法の確立に向けて,本特集が臨床的・基礎的研究を進めるための一助になれば幸いである。





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